「相続預金はすぐに引き出せるの?」
2024年11月22日
大切な方との死別の悲しみに加え、葬儀費用や当面の生活費の心配など、お金の問題は相続人の皆様にとって切実な課題です。預貯金の引き出しに関する基本的な仕組みをご説明します。
◆預貯金は原則として凍結されます
故人名義の預貯金は、相続開始と同時に いったん引き出しが制限されます。これは相続人全員の共有財産となるため、一部の相続人だけが引き出してしまうことを防ぐためです。
◆当面必要な費用の確保方法
葬儀費用などの必要経費については、銀行所定の手続きにより払い戻しが可能です。一般的に必要な書類は以下の通りです。
・死亡診断書(写し)
・喪主であることを証明する資料
・印鑑証明書
・預金通帳、届出印
◆仮払い制度を利用する
相続人の生活費などについては「仮払い制度」が利用できます。これは遺産分割協議が整う前でも、預貯金の一定額を引き出せる制度です。
・家庭裁判所の審判を得た場合
家庭裁判所が仮取得を認めた金額
・家庭裁判所の判断を経ない場合
相続開始時の預金額×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分
(ただし、同一金融機関からの払戻しは150万円が上限)
仮払い制度利用の必要書類は、金融機関の様式等に従ってください。
この制度にはデメリットもあり、いずれ受け取る相続分を先に受け取ることを意味するため、引き出したお金を自分のために使うと、相続するという「意思表示」をしたことになり、その後に相続放棄することができなくなってしまいます(葬儀費用など故人のために使う分には、この「意思表示」にはならないので、使途を示す領収書などを残しておきましょう)。
◆預貯金の凍結解除には遺産分割協議書が必要
預貯金の凍結を完全に解除するには、相続人全員の署名・押印のある遺産分割協議書が必要です。ただし、被相続人に配偶者がいる場合は「配偶者名義変更」制度により、より簡単な手続きで預貯金の一部を変更できる場合があります。
早めに金融機関に相談することで、必要な費用の支払資金を円滑に確保することができます。